男性にとって若くして発症する薄毛ほど悩ましいものはなく、こういった症状で抜け毛がひどくなってしまうと、ストレスにもなってしまい精神衛生上よくありません。AGAは症状が進んでしまうと、徐々に地肌が見える面積が増え、最終的に頭部の大部分が頭皮剥き出しになってしまう場合も多いものです。
この薄毛を引き起こす原因としては、様々なものが考えられます。決してひとつに特定されることは無く、それぞれの症状にあわせて、きちんと症状や体質をチェックすべきです。その上で原因を特定し、それに合わせた対策を練っていく必要があります。対策を行う上で手を抜いたり、諦めたりしなければ、薄毛症状を格段に改善できる場合も大いにありえるでしょう。
「頭皮の毛穴に詰まった脂」でハゲるのか?
例えば当サイトように、今や薄毛やAGAに関しての情報がネット上にあふれています。その中でも都市伝説として扱われるレベルのものも多くあり、エビデンスや根拠のない情報が正しいとされているケースもありました。例えばスカルプシャンプーでよく見かける「頭皮の毛穴に詰まった脂」について、本当に頭皮の毛穴に詰まった脂によって薄毛になってしまうのか、AGAが進行してしまうのかを解説していきます。
毛穴に詰まった脂の正体は「角栓」
まず、スカルプシャンプーのCMなどでもよく「毛穴に詰まった脂」と表現されていますが、正確には皮脂と角質が固まってできた老廃物の「角栓」というものです。老廃物とはフケなどのはがれ落ちた皮膚や、汗に混じって排出される代謝産物などで、毎日洗髪しても少なからず頭皮にあります。
角栓があると毛穴の出入り口をふさいでしまい、頭皮に髪の毛が生えにくい環境を作ってしまいます。せっかく毛が生えてきても弱いものとなる場合が多く、頭髪全体が薄く見えることもあるのです。また、毛髪や育毛のケアをしていているじょうたいで育毛剤を使用しても、毛穴のなかへ十分に浸透せず、思うような効果が期待できない点もデメリットといえます。
角栓が毛髪の成長を妨げるのは本当
角栓はいわば、かつて中国で行われていた、幼少期の女性の足を布で強く縛ることで、足の整形を施した纏足(てんそく)のようなものです。毛穴を塞ぐことで髪の毛の成長を妨げてしまい、成長したとしても毛穴がふさがってしまったために細く成長してしまった毛になってしまいます。
また、角栓が髪の毛をまっすぐ成長するのを妨害してしまい、表皮から顔を出した時にはまっすぐ成長できなかった髪の毛になってしまうのです。
頭皮の皮脂は「悪いもの」とは限らない
スカルプシャンプーのCMで、頭皮の皮脂は悪いもの扱いされてきているためか、頭皮の皮脂のイメージがすこぶる悪いものとして扱われています。確かに頭皮の皮脂は、大量に分泌されると頭皮のターンオーバーが崩れ、角質が大量に剥がれ落ちる「ふけ症」と呼ばれる状態になってしまいます。
頭皮には皮脂や汗などを栄養とする「マラセチア菌」という皮膚常在菌がいます。ほどよい皮脂は頭皮に潤いをもたらし、マラセチア菌は雑菌や細菌の侵入を防いで頭皮の健康を守ってくれています。
しかし、だからといって何日も洗髪しないことで皮脂が過剰にあると、皮脂を栄養とするマラセチア菌も必要以上に増殖してしまうのです。これによってターンオーバーが乱れて大量のふけが発生しまい、取り切れていない皮脂は酸化が進み、ほこりや汚れを吸着して古い角質とまざりあうことでベトベトした「ふけ」が発生してしまいます。
逆に過度な洗髪や洗浄力の強いシャンプー剤によって、皮脂が必要以上に落とされると、潤いがなく乾燥した頭皮は免疫力が低下し、ターンオーバーのリズムが早まって未熟な角質細胞まで剥がれ落ちるようになります。
それだけではなく、皮脂を取り除こうとして1日に何回もシャンプーで洗髪してしまうと、頭皮が乾燥してしていると勘違いをしてしまうのです。そうなると、もっと潤そうと皮脂を過剰に分泌してしまい、結果的に肌のターンオーバーが崩れてしまい、「ふけ」の発生を促してしまうでしょう。
角栓は日々の生活習慣でも発生する
睡眠不足や仕事のストレス、脂っこいものばかりの食事、アルコールやニコチンの過剰摂取などの生活習慣に関する問題点が数多く見受けられる人は少なくはないでしょう。その場合、頭皮に皮脂が大量分泌したり、頭皮の毛細血管の流れが悪くなったりしてしまい、栄養分の補給が困難になるなどの様々な支障が現れます。
皮脂の分泌がひどくなって「脂漏性皮膚炎」などの症状に陥ると、毛穴がそれらで毛詰まりを起こして頭髪の成長を妨げることになりかねません。
皮脂が毛穴に詰まってしまうことは、薄毛を大いに促進させることになってしまいます。さらに頭髪や頭皮を不潔な状態のままにすると、やはりゴミや角質あるいは皮脂が毛穴を詰まらせて、血行悪化や外部から酸素を取り入れにくくさせるなどの育毛を妨げる様々な原因を作り出してしまうのです。
まずはこのような状態を改善する意味でも頭皮環境は常に清潔に、なおかつ生活習慣に問題点が見られる場合には速やかに改善することが薄毛改善の近道と言えるのです。その意味では、シャンプーメーカーの宣伝でよくみられる、頭皮の脂が多いとハゲやすいという主張は言い得ていると言えるでしょう。
ただし注意したいのは、薄毛の原因がAGAにある場合です。この場合にはAGAとの因果関係は全く認められないことからも、どれだけ頭皮の脂をコントロールしたところでAGAを改善することには繋がりません。
皮脂が原因でAGAを発症するわけではない
そもそもAGAとは、男性の精巣にて作り出される「テストステロン」が頭皮付近に分泌される「5αリダクターゼ」という酵素と結びつくことで「DHT(ジヒドロテストステロン)」という男性ホルモンに変換されます。
DHT(ジヒドロテストステロン)が頭髪の根本にある毛母細胞中の中にある、受容体と結合することによって一気に頭髪の成長サイクルを乱してしまうのです。結合したことによって、健康な頭髪であってもすでに成長を終えてしまったと判断してしまい、毛細血管から栄養分を補給することをやめ、新陳代謝がストップしてしまいます。こうやって頭髪は成長期から退行期へと突入し、そのまま抜け毛となって抜け落ちていき、特に男性ホルモンの影響のでやすい額の両サイドや頭頂部などから薄毛が一気に進んでいってしまうのです。
つまり、こういったAGAの症状はあくまで男性ホルモンと特殊な酵素が反応し合って頭髪の成長サイクルを見出すという病気であって、頭皮の皮脂などの分量は全く関係のないことになります。当記事でタイトルにしているの「頭皮の脂が多いとハゲやすい」といういわれの根拠は無しということができるでしょう。
まとめ
皮脂が分泌されることで、頭皮の皮脂に常在する「マラセチア菌」が適度に頭皮をバリアしてくれますが、大量に分泌してしまうと、「ふけ」や「角栓」の原因になってしまいます。
これらによって髪の毛が正常に成長することができず、切れ毛や枝毛などといった不健康な髪の毛になってしまうでしょう。
頭皮の皮脂は、適量であれば頭皮を守るバリアの役割を担っています。しかし大量に分泌されればふけや血行不良などで薄毛に影響してしまうかもしれません。しかし頭皮の皮脂がAGAの進行を早めてしまうですとか、AGAを発症するわけではないのです。
AGA由来の薄毛を治すためには、薄毛治療専門の特効薬を服用することで「DHT(ジヒドロテストステロン)」の発生を抑えることが重要です。内科や外科、皮膚科、美容クリニックなどでは「フィナステリド」という成分を含んだプロペシアなどの飲み薬を処方して治療に当たっています。(詳細:5α還元酵素阻害薬「プロペシア(フィナステリド)」の効果や副作用を解説)
さらにDHT(ジヒドロテストステロン)の発生を抑えると、今度は「ミノキシジル」などの塗り薬によって頭皮の毛細血管の拡張させて血流量を増やし、しっかりと栄養分を補充することが重要となっていきます。(詳細:ミノキシジル(内服薬/外用薬)の発毛効果と気になる副作用とは)
頭皮の皮脂の分量はAGAとの因果関係は全くないながらも、薄毛改善のためには頭皮を清潔な状態に保つことは必要最低限として重要なことなので、日頃からきちんとケアすることが大切と言えるでしょう。
スカルプ系のシャンプーを使うにしても、きちんと頭皮のことを考えている商品がオススメです。
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