近年、IPS細胞やES細胞の目覚ましい発展により再生医療に大きな注目が集まっています。AGA治療の分野においても、この最先端の医療分野が成長因子(グロースファクター)を頭皮に注入して発毛を促すという目的で活用され始めています。
成長因子(グロースファクター)治療は、画一化されたAGA治療では無い為、代表的な名称は「育毛メソセラピー」ですが、各クリニックが「成長因子注入治療」「グロースファクター治療」「AGAメソセラピー」「HARG治療」と言った様々な治療名称で提供されており、その治療費用も大きな差異があります。
その為、このページではこれから育毛メソセラピー(成長因子/グロースファクター)を検討している方に向けて、そもそも育毛メソセラピー(成長因子・グロースファクター)とは一体どの様なAGA治療なのか、そしてそのAGA治療効果や各AGA治療クリニックの治療費用を紹介していきたいと思います。
育毛メソセラピー(成長因子/グロースファクター)治療とは
まず、そもそも成長因子(グロースファクター)治療や育毛メソセラピーは一体どんなAGA治療が行われるのかを説明していきたいと思います。
治療の方法としは、注射や医療機器を利用して成長因子(グロースファクター)を含んだカクテル(薬剤)を頭皮に直接注入する治療法です。育毛剤の様に頭皮の表面に薬を散布して皮膚を介して毛乳頭細胞を刺激する方法とは異なり、頭皮と真皮の間に直接薬を注入することが出来る治療になる為、非常に高い薬剤の吸収率が期待できる治療方法です。
なお、成長因子(グロースファクター)を注入する方法は各クリニックに特色がありますが、下記の通り大きく分けて3種類あります。
注射針を用いる育毛メソセラピー
医師が注射針を使って頭皮と真皮の間に成長因子(グロースファクター)を注入していきます。注射針で頭皮を何十回も刺す施術になる為、腕や経験が豊富な医師が行えば痛みを感じることはありません。
しかし、腕や経験の無い医師が注射針を用いて育毛メソセラピーをすると、頭皮の真皮まで注射針が深く刺さってしまうことで出血をしたり、かなり痛みを感じるケースがあります。その為、痛みに弱い方は注射針を利用して育毛メソセラピーをしている病院はあまりおすすめしません。ただ、クリニックによっては不要な痛みを避ける為に頭部に部分麻酔を併用する場合もあるようです。
メドジェットを用いる育毛メソセラピー
0.06mmという極めて細い針が付いているメドジェットという機器を用いて、炭酸ガスの噴射を利用して30ミクロンの水流と成長因子(グロースファクター)を一瞬の間に細胞間に浸透させる方法です。
ここ数年で「HARG治療」などでも広く用いられています。ガス銃で頭皮に薬を打ち込むといった方がイメージし易いかもしれません。
なお、一部クリニックのホームページではメドジェットに痛みが無い様に記載があるケースがありますが、実際に経験した体験談をお話しさせて頂くと「棒で叩かれた様な鈍痛」があります。
ダーマローターを用いる育毛メソセラピー
頭皮に電気を流して細胞間に隙間を作り、そこにローラーで成長因子(グロースファクター)を塗り込んでいく方法です。この手法に関しては痛みは一切ありません。違和感があるとすれば多少電気のしびれを感じる程度です。
その為、痛みや出血に弱い人はこのダーマローターを利用した育毛メソセラピーをお勧めします。ただ、注射針やメドジェットの様に、頭皮細胞に直接針を入れて薬剤を打ち込む訳ではないので、薬剤の吸収率に関しては他の2つの手法と比べると若干下がることが考えられます。
なお、育毛メソセラピーのAGA治療効果や発毛のメカニズムを説明する前にそもそも成長因子(グロースファクター)がどんな物質なのかを説明していきたいと思います。
成長因子(グロースファクター)とは
成長因子(グロースファクター)は人体のあらゆる細胞に含まれており、特定の細胞の増殖・分化を促進するタンパク質の総称のことです。肌や頭皮には多くの成長因子(グロースファクター)が存在し、傷ついた細胞を修復したり、頭皮に存在する毛母細胞に働きかけ、髪の毛が生成を促したりします。その種類は数百に及びますが、実際に医療で利用されているのは数十種類です。
このように成長因子(グロースファクター)は細胞の増殖や特定の細胞に分化するためのシグナルとなっているのです。しかし、この成長因子(グロースファクター)は永遠に体内で一定量が製造され分泌される訳ではありません。
ホルモンと同様に20代を過ぎると加齢とともにその体内での製造量及び分泌量はどんどん減少をしていきます。歳をとり成長因子(グロースファクター)が減少して不足し始めると薄毛や老化現象の原因につながると考えられています。若いころは傷の治りが早かったのに、老いとともに治りが遅くなっていくのは成長因子(グロースファクター)の減少がその一因ともいわれています。
その為、成長因子(グロースファクター)はアンチエイジングの分野でいち早く注目を集め、美容整形の分野でプラセンタと同様に美肌注射として肌に成長因子(グロースファクター)を直接注入する治療法として活用されています。なお、美肌注射は、成長因子(グロースファクター)を老化の気になるヶ所に注入します。注入された成長因子(グロースファクター)が肌細胞に働きかけ、細胞を増殖させ肌にハリとツヤをもたらすのです。シミ、シワ、たるみの改善にも効果があると言われています。
成長因子(グロースファクター)の発毛効果とは
成長因子(グロースファクター)の役割を理解したところで、次はAGA治療に伴う発毛効果がどの程度あるかという点に関してです。
まずお伝えしておかなければならないのは、日本皮膚科学会によって策定された「男性型脱毛症診療ガイドライン」において、成長因子(グロースファクター)を使用したAGA治療は「行わないほうがよいというC2判定」が下されています。
しかしながら、この判定において発毛効果に対して低い判定が下されたのではなく、「有効のエビデンスがない」といった臨床試験や安全性のエビデンスが不十分である状況に対しての判定であることは理解をしておく必要があります。
その上で、毛母細胞で細胞増殖因子が分裂することで新しい髪が生まれて成長していくのですが、この過程において「酸素」や「栄養」も勿論ですが「成長因子(グロースファクター)」も非常に重要な役割を果たしています。頭皮においても成長因子(グロースファクター)は毛髪細胞の増殖や毛髪を司る細胞に分化するためのシグナルの役割を担っています。
しかしこの成長因子(グロースファクター)は加齢とともに減少していきます。成長因子(グロースファクター)が不足することで髪の成長が鈍化していきます。そこで、加齢とともに減少してしまった成長因子(グロースファクター)を頭皮に直接注入することで、毛包幹細胞を活性化し、毛母細胞を刺激、新しい髪の毛の生成を促進させる治療が育毛メソセラピー(成長因子/グロースファクター)のAGA治療です。
しかし、まだAGA治療の分野において歴史も浅く、国内での臨床数も少ない為、発毛効果や副作用においても未知の領域も多いというのが現状です。
育毛メソセラピーに用いる代表的な成長因子(グロースファクター)の種類
成長因子(グロースファクター)には様々な種類や機能、そして効果をもたらします。そこで現在のAGA治療で用いられている代表的な成長因子(グロースファクター)を紹介していきます。
英語表記 | ||
Fibroblast growth factors (FGF) | ・肌のハリや弾力を保つために必要なコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸の分泌量を増やす ・皮膚の修復に働きかける ・既存の血管から新しい血管を作りだし、構築させる作用 | ・主に血管に作用し、毛母細胞の増殖を促す働き ・頭皮の血流を促進し、毛包内に十分に髪の成長に必要な栄養を供給する |
FGFは、胎生期の中胚葉形成や器管形成に重要な役割を果し、生後の創傷治癒・組織再生をはじめとした種々の病態生理学的現象に深く関与する。
一般社団法人日本血栓止血学会 / FGF(fibroblast growth factor)用語集(詳細説明)
繊維芽細胞増殖因子は、繊維芽細胞という細胞を増殖させる成長因子であり種類はFGF-1~FGF-23の23種類あります。
英語表記 | ||
keratinocyte growth factor (KGF) | ・髪や爪などをつくるのに必要なケラチンの生成を補助する成長因子 | ・毛髪の形成に必要なケラチンの生成を促進させることで、毛包の発毛環境を補正 |
英語表記 | ||
vascular endothelial growth factor | ・傷ついてしまった血管の修復 ・新しい血管をつくる ・血流を促進し、毛乳頭細胞に十分な栄養や酸素を血液に乗せて供給 | ・毛根を刺激し髪を強くする ・頭皮環境を活性化及び正常化 |
VEGFは、血管内皮細胞の増殖を始めとした血管新生過程の促進、血管透過性の亢進作用を有することから、血管新生が重要な役割を果たす各種疾患との関連が推定されている。
株式会社LSIメディエンス / 研究検査
血管内皮細胞の増殖に関係する成長因子です。
英語表記 | ||
Thymosin-β4 | ・バルジ領域の毛包幹細胞の移動を促進させ、髪の毛のもととなるTA細胞を増殖 ・新たな血管をつくりだす。 | ・毛根を刺激し髪を強くします。 ・頭皮環境を活性化及び正常化。 |
英語表記 | ||
stem cell factor | ・毛髪強化因子の発現を促進 | ・休止期の毛包を成長期へと誘導 |
英語表記 | ||
Keratinocyte Growth Factor (KGF) | ・ケラチノサイトに働きかけ、シワを抑制 ・紫外線から守る | ・毛根を刺激し毛髪を強化 |
英語表記 | ||
Insulin-like growth factors 1 | ・人体のほとんどの細胞に作用し、筋肉、骨、腎臓、神経、皮膚および肺の細胞に作用 | ・毛母細胞を活性化し、発毛を促進 |
英語表記 | ||
Insulin-like growth factors 2 | ・損傷した細胞の修復や神経組織の形成、脂肪分解機能がある | ・休止期である毛髪を成長期に戻し発毛を促進 |
脳や脊髄、筋肉などから分泌されます。
英語表記 | ||
Insulin-like growth factors |
・細胞の成長と発達に関わる成長因子 | ・毛包内の毛母細胞の分裂を促し、発毛を促進 |
英語表記 | ||
Human Epidermal Growth Factor-13 |
・表皮の肌の弾力を保つために必要なコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸を生成 ・肌にハリや弾力、潤いなどを与える |
・毛髪の成長を促進 ・毛根に活力を与え、白髪の発生を抑制 |
線維芽細胞増殖因子の1つです。
英語表記 | ||
acetyl decapeptide-3 | ・ヒアルロン酸、エラスチン、コラーゲンをシミやしわを抑制 ・肌機能を正常化 | ・新たな血管をつくりだし、頭皮の血行を促進 ・毛細血管が拡張することにより、髪の成長に必要な栄養や酸素を届ける |
オリゴペプチドの1種です。
英語表記 | ||
octapeptide-2 | ・バルジ領域を活性化し、毛包幹細胞の生成を促進 ・毛包幹細胞は毛母細胞となり、成長すると毛髪になる | ・バルジ領域の毛包幹細胞を活性化 ・バルジ領域の活性化により白髪の発生を抑制 |
アミノ酸で合成されているペプチドです。
スカルプDの中でも10,000円を超える高級スカルプシャンプー「ディグニティ」シリーズにも配合されています。
AGA治療クリニックの成長因子(グロースファクター)治療や育毛メソセラピーについて
成長因子(グロースファクター)治療や育毛メソセラピーは全てのAGA治療クリニックが実施している訳ではありません。その分野に知見のある医師が勤務をしていたり、成長因子(グロースファクター)治療を行うことが可能な施設や機器が必要です。
その為、どのクリニックが成長因子(グロースファクター)治療や育毛メソセラピーを実施しているのかを一覧で紹介しています。また、どの程度の治療費用で施術を提供しているかを比較して掲載していますので、成長因子(グロースファクター)治療や育毛メソセラピーを検討している方は是非参考にしてみてください。
AGA治療クリニックの成長因子(グロースファクター)治療や
育毛メソセラピー費用比較
治療名称 | クリニック名 | 治療費用(税込) |
ノーニードル育毛メソセラピー | 銀座総合美容クリニック (銀クリ) | 19,800円/1回 |
毛髪再生スマートメソ プレミアム | 湘南美容クリニック (旧ルネッサンスクリニック) | 99,810円/3回 |
Dr’sメソ治療 2cc (AGAメソセラピー) | AGAスキンクリニック (AGAスキン) | 88,000円/1回 |
医療発毛頭皮治療 ベーシック | 表参道スキンクリニック (ヘアジニアス) | 34,320円/1回 |
HARG療法 ハーフ | 四谷ローズクリニック | 88,000円/1回 |
HARG療法 頭部1/3 通常価格 | 中央クリニック | 132,000円/1回 |
再生注入治療 再生促進メソセラピー | TOMクリニック | 55,000円/1回 |
HARGENON (ハーゲノン) 単回治療 | HARG治療センター | 210,000円/1回 |
ダーマペン | 銀座HSクリニック | 49,500円/1回 |
プレミアムグロースファクター再生療法 ダーマスタンプ法 | 聖心毛髪再生外来 | 71,500円/1回 |
AGAメソセラピー | 東京AGAクリニック | 66,000円/1回 |
AGAメソセラピー | 東京青山クリニック | 77,000円/1回 |
HARG療法 前頭部(1/2) / 頭頂部(1/2) | 東京ロイヤルクリニック | 88,000円/1回 |
Dr’sメソ 2cc (AGAメソセラピー) | 東京美容外科メンズ専科 | 55,000円/1回 |
成長因子(グロースファクター)治療や育毛メソセラピーの選び方と考え方
上記の様に成長因子(グロースファクター)治療費用を比較して見てみると大きな価格の開きがあることは分かります。この点に関してまず費用の安さだけで選ぶというのは正解であり間違いでもあります。
どういう事かと言うとAGAの治療薬と同様に、成長因子(グロースファクター)治療の効果は体質やその時の頭髪の状況により効果の出方は様々です。
その為、いきなり高価な治療法を選択するのではなく、まず安価な成長因子(グロースファクター)治療を試してみて、その効果を鑑みて費用とのバランスで一定の発毛効果が期待できるようであれば、より高価で治療効果の高そうな成長因子(グロースファクター)の治療法を模索する方法が賢い選択といえるでしょう。