「秋になると急に抜け毛が増える」「普段より多く抜けている気がする」といった声がネット上で見られます。実際のところはどうなのでしょうか。
暑さが過ぎ去り、秋が本格化しています。季節の変わり目の時期といえば、気温の変化によって体調を崩しやすくなることが知られていますが、髪に変化が現れるケースもあるようで、ネット上では「秋になると急に抜け毛が増える」「普段より多く抜けている気がする」といった「抜け毛」の量を気にする声が特に多くあります。
秋になると普段より、抜け毛が増えるのは本当なのでしょうか。著書に「髪トレ」(主婦の友社)などがある、ヘアケアリスト(毛髪診断士)の余慶尚美さんに聞きました。
英国の研究で8~10月が最多
Q.そもそも、髪の毛とは何ですか。
余慶さん「髪の毛は頭皮の奥にある毛母細胞が分裂・増殖し、その細胞が角化(角質化)したものです。日本人の髪は1人約10万本あるといわれ、1センチ四方の広さに150本ほど、1つの毛穴からは2、3本生えています。通常、1日に80~100本くらいの髪の毛が自然に抜け落ちています」
Q.人間の頭髪の正常なサイクルとは。
余慶さん「髪は『成長期(3~6年)』→『退行期(2~3週間)』→『休止期(数カ月間)』⇒『脱毛期・新生期』というサイクルで、生まれて、成長して、抜ける…を繰り返します。成長期の期間は男性より女性の方が1、2年ほど長い傾向がありますが、女性も40代を過ぎると、女性ホルモンの分泌量の減少によって成長期が短くなり、薄毛や細毛になる人が増えます。
髪は毛根にある毛乳頭(毛母細胞)が長期的、かつ活発に活動することで成長しますが、その活動が十分でなかったり、成長期が通常よりも短くなったりすることで、薄毛や抜け毛、細毛、白髪につながります」
Q.「秋になると抜け毛の量が増える」のは事実でしょうか。
余慶さん「事実です。イギリスの研究機関が発表した論文によると、成人男性(18~39歳)の抜け毛の数を測定したところ、他の月に比べて8~10月が圧倒的に多かったとのことです。中には、冬と比べて2倍もの本数が抜けたという人もいたようです。このことから、抜け毛と季節には少なからず関係性がみられることが分かります。
その原因として考えられるのが、夏場の紫外線や熱による頭皮のダメージ、さらには毛細血管のダメージです。これらの要因によって、毛母細胞に栄養がうまく届けられず、成長途中の髪が抜け落ちてしまうことが考えられます。また、毛髪は睡眠時に最も成長します。睡眠中は成長ホルモンの分泌が増えるとともに、毛髪に栄養を与える毛細血管の血流がよくなるためです。しかし、夏場は質のよい十分な睡眠が確保しづらく、毛髪の成長が妨げられやすくなります。
その結果、8月から秋の季節に抜ける通常の髪の量にプラスして、成長段階の毛髪の抜け毛も増える傾向があると考えられます。つまり、8月から秋にかけては、夏場のダメージやその残った影響によって、通常の80~100本にプラス分の抜け毛があるということなのです。
先ほど触れたイギリスの論文は成人男性についての研究ですが、夏場の頭皮のダメージなどは女性も同じ条件なので、女性も男性と同様、秋に抜け毛が増えると考えられます」
Q.秋に抜け毛が増えやすくなる人の特徴はありますか。
余慶さん「先述の通り、秋に抜け毛が増えるのは誰にでも起こり得ることです。しかし、特に男性は汗や皮脂の分泌が女性と比べて多い分、頭皮環境が悪化しやすく、『秋に多く抜ける』と感じる人が多いようです。また、女性の場合も40代以降の人は代謝の低下や女性ホルモンの減少によって、相対的に男性ホルモンの影響を受けやすくなるので、抜け毛が増えたと感じることが多くなるでしょう」
Q.秋になって抜け毛が増えたことを自覚するためのポイントはありますか。
余慶さん「朝起きたとき、枕についている(落ちている)髪の毛や洗髪後の排水口の抜け毛の量、髪を乾かすときのヘアブラシなどを意識していると、さまざまな場面で『抜け毛が明らかに増えたな』と感じられると思います。また、他の毛髪よりも細い毛や短い毛がある場合も、抜け毛が増えてきている目安です」
抜け毛増加を防ぐには?
Q.秋の抜け毛増加を予防するための対策を教えてください。
余慶さん「男女問わず、必ず夜に洗髪をし、頭皮を清潔に保つようにしましょう。髪は就寝時に最も成長します。一日の汚れがたまった頭皮をそのままにすると、皮脂汚れが酸化して頭皮にダメージを引き起こし、『頭皮臭』の原因にもなります。また、酸化した皮脂により毛穴詰まりが起こり、髪の成長を妨げてしまうので、健康な髪を育むためには夜の洗髪が大切です。頭皮や髪がぬれたまま就寝すると雑菌の温床となるので、必ずきちんと乾かすようにしてください。
夏場の間だけ、朝・夜とも洗髪するという人も多いと思いますが、洗い過ぎも皮膚の乾燥や皮脂の過剰分泌につながり、頭皮の炎症を起こすなど頭皮環境の悪化を招きます。そのため、できれば1日2回の洗髪は避けた方がよいです。特に、成人女性であれば、そこまで皮脂が分泌されていないので1日1回で十分でしょう。頭皮をいたわるためにも、洗浄力の穏やかなアミノ酸系のシャンプーを用い、頭皮を傷つけないようにしましょう。
また、寝癖直しやヘアスタイリングのしやすさから“朝シャンプー派”という人も多いと思いますが、基本は『夜に洗髪』の生活リズムにし、朝は寝癖などの気になる部分だけ根元からぬらして、スタイリングすることをおすすめします。この場合も必ず、頭皮と髪を完全に乾かすことを意識してください」
Q.食生活についてはどうでしょうか。
余慶さん「脂っこいものや甘いもの、動物性タンパク質の取り過ぎは避けましょう。和食中心の生活を意識し、タンパク質や青魚、赤身肉など質のよい脂や脂肪分の少ない肉、緑黄色野菜、卵、大豆食品、海藻類などを積極的に取りましょう」
Q.秋になり、抜け毛の量が増えてきてしまった場合、どのようなケアをするとよいでしょうか。
余慶さん「もし、既に抜け毛が増えてきていても、新しい髪に生え変わる絶好のチャンスと思い、健やかな髪を育てる準備をしてください。
髪は東洋医学では別名『血余(けつよ)』とも呼ばれます。『血液や栄養はまず、内臓などに届けられ、髪に届くのはその余り』という考え方からです。髪を健康に保つためには、血液や栄養が豊富に必要で、頭皮の血流改善のため、洗髪中や洗髪後に頭皮マッサージを心掛けましょう。このとき、爪を立てずに指の腹を使うのがポイントです。マッサージの際は育毛剤を使用するのも効果的だと思います。
また、日本人女性はブラッシングの回数が少ないといわれていますが、ブラッシングは簡単な頭皮マッサージにもなります。『普段の回数+3回』を目安に、頭皮を優しく刺激するブラッシングの回数を増やしてみてください。そして、毎晩、洗髪をし、頭皮を清潔に保つこと。和食中心の食生活や質のよい睡眠も心掛けましょう。亜鉛やマグネシウムなどのミネラル、葉酸、ビタミンE、高麗(こうらい)ニンジンなど、血流改善に効果的とされるサプリメントを上手に取り入れるのもおすすめです。
髪は今のあなたを映し出すバロメーターです。秋の抜け毛というピンチをチャンスに変えて、新しく生えてくる髪が健やかで美しくなるよう、毎日トライしてみてくださいね」
(オトナンサー編集部)
管理人コメント
「秋は抜け毛が多くなる季節」と多くの人が思っていることでしょう。夏バテにより食欲が低下し、栄養が偏ることで髪の毛が成長しにくくなってしまい、抜けてしまいます。しかし、夏バテは抜け毛の要因の一つでしかありません。ニュースでも取り上げているように、夏場の紫外線や睡眠不足など、他にも様々な要因が考えられるのです。
夏場ダメージを受けてしまった頭皮の環境を整えるためには、日々の生活を整えることも必要になってきます。夏の名残として朝シャンを行っているのであれば、夜に行うようにすべきでしょう。1日の汚れが付いたまま寝ることで髪の毛の成長を妨げてしまいますし、夜の間に分泌された皮脂を落としてしまうことにもなってしまいます。
夜の間に生成された皮脂は、日中の紫外線や汚れから頭皮を守るバリアの役割をしていますので、朝シャンはそれを落としてしまうのです。(詳細:AGA都市伝説「朝シャンすると薄毛の予防になる」って本当?)
秋は抜け毛が増える季節ではありますが、抜ける量があまりにも多いのであれば、季節ではなく脱毛症などを疑う必要があるかもしれません。男性型脱毛症(AGA)や、女性型男性型脱毛症(FAGA)で悩む人も増えており、専門的に受診ができるクリニックもあります。抜け毛が気になるようであれば、AGAクリニックを受診し、治療できるうちに治療するのがベストでしょう。(詳細:薄毛を改善してくれるおすすめAGAクリニックランキング)