日本人女性の閉経の平均年齢は約50歳(日本女性医学会調べ)。その前後5年間(計10年間)を「更年期」ととらえ、その時期に起きる不調を「更年期症状」と呼ぶことは今や一般的だ。
しかし日本では、不調に悩みつつも更年期による影響だと気づかない女性も多い。また、「いい年齢をして産婦人科にかかるのは恥ずかしい」と医者にかからなかったり、あるいは積極的な治療を受けることへの抵抗感が強かったりして、治療を受ける女性はまだまだ少ない。
だが今、女性の更年期治療が変わってきている。更年期の症状は確実に「治せる」ものになってきているのだ。〈最新医療〉から〈健康食品〉、〈今すぐ試せる生活習慣〉まで、専門の医師たちが「更年期症状に効果があった」と、エビデンスをもって推奨する方法を紹介する。(全4回の3回目/#1、#2、#4)
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【case 3】女性型脱毛 女性の薄毛・脱毛は男性より難しい
エレベーターの中にある監視カメラにたまたま映し出された自分の頭頂部を見て、つむじのあたりの地肌がいつのまにか透けているのにぎょっとする――。加齢による薄毛を実感する始まりかもしれない。
「女性の脱毛は『びまん性脱毛症』と言って、頭頂部を中心に髪全体が薄くなっていくものが多いです」
というのは国際アンチエイジング医学会専門医で、ウィメンズヘルスクリニック東京院長の浜中聡子氏だ。
「女性の場合、エストロゲンが髪の成長期を長く保たせる働きをしてくれます。そのためエストロゲンの分泌ピークである20代後半までは毛髪量が豊富ですが、その後は細毛化、軟毛化といってハリやコシがなくなり、うねりやパサつきがでてボリュームにつながりにくい髪質に変わりながら、抜け毛も増えていくのです(下図参照)」
浜中氏のクリニックでは女性の薄毛治療を行っている(保険適用外)。
「分娩後は一時的に抜け毛が増えることもあります。子育ての忙しさや復職、公園デビューなど人間関係のストレスの中、そのダメージが抜けず、一気に髪が細くなったり、白髪が出たり。毛量が変わったと駆け込んでくる女性も多いです」
浜中氏によると、女性の場合、男性に比べて、薄毛の原因が複雑なのだという。
CMなどでもよく目にするように、男性型脱毛症(AGA)では、男性ホルモンのジヒドロテストステロンの毛根への作用を阻害する内服薬が生まれたため、AGAの治療法はほぼ確立したと言ってもいい。
爪が硬くなったら髪は半年先
一方、女性型脱毛症では、「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017」によれば、治療薬で推奨度「A」となっているのはミノキシジルの外用薬だけ。他の外用薬などは、かつらの着用と同じ程度の有用性しか認められていない。
これについて、浜中氏は「女性の髪の問題はエストロゲンだけで解決するような簡単なものではない」という。また「研究例が少なすぎる」という現状もある。
浜中氏は最近、頭皮近くの細い血管の血流速を特殊な機器で測定し、頭頂部の皮膚の厚みとともに比較した試験結果を発表した。
「その結果、薄毛の症状が出ている女性では皮膚の厚みが薄くなり、血流量が低下していることがはっきりと分かりました。とくに頭頂部では血流低下が進んでいます。薄毛の人は血流が不均一で、毛根全体に行き渡っていなかったのです」
こうした実証データを元に、浜中氏は、ミノキシジル外用薬やホルモン補充などとともに、女性の頭皮の血流アップと保湿に着目した治療を行っている。
「髪の質は毛根から生えてくるときに決まります。ビタミン類やミネラル、アミノ酸など日頃の栄養の取り方や睡眠、禁煙、また有酸素運動などで手先や足先の細い血管まで血流を良くすることも、髪の質に関係します」
白髪を染めずに伸ばしていく「グレイヘア」も話題だが、スタイリッシュに見せるためにはやはり髪の量が欲しい。
「髪と爪は同じ成分なので、爪から硬くなって質が変わってきます。これを目安に、半年先を見据えてください」
管理人コメント
男性の場合、薄毛になる原因は男性ホルモンが髪の毛にとっての悪玉男性ホルモンへと変換されることで起きるAGAですが、女性の場合は女性ホルモンの乱れによって引き起こるびまん性脱毛症が多いと言われています。
女性ホルモンの乱れは様々な理由が考えられ、出産やストレスなどでも乱れてしまう繊細なものです。
男性脱毛症のAGAのように、「5α還元酵素阻害薬」で抜け毛を予防できるプロペシアなどを服用すればいいわけではなく、生活水準を一定レベル保つ必要があると言えるでしょう。栄養の偏らない食事やストレス発散などの規則正しい生活が必要とされます。
(詳細:女性の薄毛(FAGA)の原因や治療法とは)